SANKT OBERHOLZ

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プレンツラウアーベルグからハッケーシャーマルクトに向かう途中、路面電車に乗るたびに気になっていた外壁。二階建ての真っ白な壁に牛のトレードマークのスタンプが目をひく「SANKT OBERHOLZ」。バックには青い空と白い雲がいつも流れていてほしい、そんなカフェである。

ベルリンでは異色のニューヨーク風とよばれるゆえんは、おそらくこの風通しと品行方正なさわやかさであろう。ここで忘れてはならないのは、このお店で導入している最近増加中のワイヤレスLAN(インターネット接続が無料)。ベルリンの文化やファッションというのは、時代に逆行することではないかと錯覚してしまうくらいアナログ優勢のなか、このカフェのラップトップ使用率はやはりニューヨークだ。それは実際に、かの国のカフェでラップトップを使っている人が多いということを直接意味するわけではなく、ひとつのイメージであるのだが。

もちろんドイツでも、公の場で隣り合った大勢がそれぞれ個別にラップトップに向かっている図はあるが、それはビジネスクラスの機中であり、ICE(ドイツの新幹線)のファーストクラスであって、カフェではない。ドイツ人にとって、本来カフェは人や紙(本や新聞やノート)に向かうところであり、タバコを味わう場所であり、アナログ的憩いの場所である。そのために世のハイテクとは無縁の場所でなければならない。インターネットで自分好みの情報が瞬時に手に入る世の中でも、ドイツでは人気のカフェには何種類かの新聞が壁にかかっているし、携帯電話で待ち合わせの相手の行方を手っ取り早く確認するよりは、待ち焦がれる気持ちに身を任せてもう一本タバコをくゆらしたいのだ。
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しかし、時にはたばこのすすから抜け出して、あるいはそんな空気が重たく感じられる時には、ただ明るくさわやかにカフェを楽しめるこの場所へ。スタッフの対応もアメリカンでフレンドリー、さらにセルフサービスなので時間がないときにも重宝する(ベルリンのカフェには極めてまれな)スピーディーなシステム(とつい横文字が横行し、文体も軽くなってしまう)。

ドイツでは(恐らくイタリアやフランスなどの他のヨーロッパの国でも)、「カフェ」と「コーヒーショップ」の区別がはっきりしている。同じくコーヒーが飲めるお店とはいえ、チェーン店でよくある(スターバックスのような)セルフサービスで持ち帰りが可能なお店はあくまでもコーヒーショップであり、カフェではない。その点でいえば、ここ「SANKT OBERHOLZ」はコーヒーショップと言えなくはないのだろうが、あえてカフェの仲間に入れたい。というのも、セルフサービスというところを除き、あとはまったく普通のカフェと同じだからである。

インテリアは個性的で全てが画一的ではなく、軽食もパスタやスープなど、日によって違う。言い方をかえれば日によっては個人的なあたりはずれがあり、そういうところにかえってあたたかい人の気配が感じられるのだ。マニュアルどおりに作られた隙のないファーストフードもたまにはいいのだろうが、カフェにはそれを求めない。ここはつまり、ドイツとアメリカの両国のいいとこどりをしたようなカフェなのだ。
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2階建ての広々とした風通しのよい空間は、昔はバター工場であったものを改装したものと聞く。窓が大きくとってあり、吹き抜けの空間はとても明るい。セルフサービスでも味気なく感じないのは、そのインテリアによるところが大きいのかもしれない。コーナーごとに雰囲気が違っていて、一階の片隅と二階に限っては机と椅子は中古の(一見)ふぞろいのものを組み合わせている。そのおかげで広々としていてもなんとなくにぎやかで、冷たい感じがしない。

2階の席から見下ろしたこの写真に写る一階右端の三角机は、一昔前の最新流行。その後はただの時代遅れだったものが、いつしか返り咲き、ベルリンではインテリアのアクセントとして最近よく見かける。ちょっと古い型の椅子もしかり。これらの個性が幅を利かせている限り、セルフサービスでもやはりここは「コーヒーショップ」ではない。つまり、待たなくてもよいという恩恵をうけられるカフェにすぎない。
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by sommergarten | 2006-08-21 03:58 | cafe
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