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Aurum (Berlin-Shoeneberg)

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`Tee hat nicht die Arroganz des Weines, nicht die Selbstbewusstheit des Kaffees und nicht die Suessliche Unschuld des Kakaos.`

‘ティーはワインのように傲慢でもないし、コーヒーのように自信家でもなければ、ココアのような甘ったるい無邪気さも持ち合わせていない‘(意訳:Aya)

メニューをめくると、お茶にまつわるいろいろな言葉が書いてあって興味をそそる。ここは、風変わりなティーとカクテル専門のお店。中国茶や日本茶、インドの紅茶など各種類が一応そろってはいるが、数自体は100数種類を誇るような専門店の比ではなく、たいしたことはない。

他に類を見ないのはそのカクテル手法。たとえば、「アイスグリーンティー」なるものは、薄い緑茶を柑橘系の果汁で割って、蜂蜜を加えたものだったりする。ドイツにしては珍しく、アイスというだけあってしっかり冷えているのだが、氷は入っていないため香り高く風味が味わえる。緑茶に柑橘果汁など一見すると不思議な取り合わせだが、紅茶にレモンを入れることがあるのを考えると、そう不自然でもない。さっぱりしていて、意外にいける。それは東京の高級カクテルバーでかつて飲んだことのある、ノンアルコールのカクテルの繊細な味に似ている。

オーナーいわく、紅茶よりも発酵させていない緑茶のほうが、味に強い癖がないためすんなりと他のものと溶け合うのだそうである。これは微妙な分量配分のバランスにもよるところが大きいだろう。彼女は何かと何かを、それもまったく異質のものを一定の分量で混ぜて新しいものを創り出すのが得意なのだ。この店の名前のサブタイトル「Tee, Cocktails, und mehr(ティーとカクテルとそのほかいろいろ)」のゆえんである

インテリアも混合スタイル。東洋のお茶を扱っていることもあるのだろうが、店の一角はドイツにしてはめずらしい靴を脱いであがるお座敷スタイル。大半を占めるテーブル席のなかで窓際の特等席に置かれたこのお座敷コーナーには、鮮やかな色のクッションが並びインテリアのアクセントになっている。しかし、全体に対するその割合が微妙に制御され、全体的にはもの静かな雰囲気だ。

「このお店の名前、『Aurum』っていったいどういう意味なんですか」
「化学の元素記号、知っていますか」
「.......」

質問に質問(それも答えられない質問で)返してきたオーナーの女性は人懐っこく微笑んでいる。お店の内装といい、イングリッシュ・アフタヌーンティーやサモアールで飲むロシアンティーなどの「セレモニーティー」なるメニュー内容からしても、オーナーの雰囲気と同様、とても女性的なお店だと思っていたが、その口から「化学」がどうのといわれて当惑してしまう。

色をたくさん取り入れた内装も、その配分を抑えることで甘ったる過ぎず、ダークブラウンと白が基調のインテリアはどこかドライである。が、かといってとっつきにくい感じでもなく、自己主張も過ぎない。それは、まるで、― 冒頭のティーと同じ存在感ではないか。

そんなドイツのティーはミルクを入れないのがお約束。そして、かならず薄いガラスのカップで出てくる。その色がまさに「Aurum」という。答えは「金」であった。

医者とエンジニア。これがここの女性オーナー二人の本職。この店は副業だという。「そのうち医者一本でやっていきたいとは思ってるんだけどね」と美貌の皮膚科医がチャーミングに言い訳をしていた。

ここはティーの店であっても、専門店ではない。
ティーを主役にすえた、化学の実験室。いろいろなものが一定の割合で混ぜられ、新しいものが創りだされる場所。そこには、金があり、夢がある。念のため、コーヒーもある。
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AURUM
Akazienstrasse 10
Berlin-Shoeneberg
Tel: (030) 77 00 89 88
W-Lan for free
by sommergarten | 2006-09-18 11:23 | cafe
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